下痢とは

下痢の原因

下痢は、原因によって以下の3つに分けられます。

分泌性下痢

分泌性下痢とは、腸管内の分泌液が過剰分泌を起こすことで下痢になる症状です。分泌性下痢は、3つの主な原因によって引き起こされます。1つ目は、小麦や魚介などの食物アレルギー、2つ目は、食あたりなどによる細菌の感染、3つ目は、解熱鎮痛薬などの薬の影響による腸粘膜の障害です。

浸透圧系下痢

浸透圧系下痢とは、腸管内に浸透圧を向上させたり腸の外から水分を吸収する成分があることによって引き起こされる下痢症状です。浸透圧を向上させる成分としては、マグネシウム含有製剤などの下剤や、ソルビトール・キシリトールなどの食品やサプリメントが挙げられます。

運動亢進性下痢

運動亢進性下痢とは、暴飲暴食や冷え、ストレスなどの要因により、自律神経のバランスが乱れて腸の動きが活性化されてしまうことで引き起こされる下痢症状です。腸の働きが活発になることで水分吸収が不十分になり、下痢を引き起こします。腹痛を伴うケースが多いことが特徴の下痢です。

慢性的な下痢をともなう主な疾患

下痢がどれだけ継続するかという観点で分類すると、一般的に4週間以内の下痢を急性下痢、それ以上続く場合は慢性下痢と呼びます。慢性下痢の原因は様々なケースが考えられますが、全身的な疾患の一症状で現れている場合や薬物の副作用による腸内の炎症、ストレスによる神経性などが挙げられます。

過敏性腸症候群

過敏性腸症候群とは、ストレスなどの心因的な原因によって引き起こされる疾患です。症状としては、3ヶ月以上に渡って月に3日以上、腹部の痛みや不快感を引き起こします。過敏性腸症候群は、便の形状により下痢型、便秘型、下痢と便秘が交互に起こる下痢便秘型の3つに分類されます。疑わしい症状がある場合には、当院までご相談ください。

潰瘍性大腸炎

潰瘍性大腸炎とは、大腸の粘膜に慢性的な炎症が起きる疾患です。発症すると、粘膜がただれたり潰瘍が多く現れるようになり、長期間腹部の痛みや下痢が続きます。また、粘液や血液の混じった便がでる場合もあります。疑わしい症状がある場合には、当院までご相談ください。

クローン病

クローン病は潰瘍性大腸炎と似たような症状を引き起こしますが、両者は全く異なる疾患です。クローン病の治療では腸管を安静に保つ必要があるため、栄養療法が適用される場合があります。症状や状態によって必要になる治療が変わりますので、正確な診断を行うことが大切です。また、深刻な合併症を引き起こすリスクもあるため、定期的に大腸カメラ検査を受けて経過観察していく必要があります。

大腸がん

大腸にできるがんを大腸がんと言います。がんが進行してサイズが大きくなると便通が妨げられるようになり、便秘や下痢、便が細くなることなどの症状が現れます。大腸がんは早期発見・治療することで、患者様の負担を軽減した治療が行えます。疑わしい症状が起きている場合や近親者に大腸がんの方がいる場合、また30歳以上の方は大腸カメラ検査を受けることを推奨します。

大腸ポリープ

大腸ポリープとは、腸の中にいぼ状の良性腫瘍ができる疾患です。ほとんどの場合が無症状ですが、中には下痢や便秘、血便などを引き起こす場合もあります。大腸ポリープを放置してしまうと大腸がんに進行する恐れがあるため、注意が必要です。30歳以上の方や近親者に大腸ポリープや大腸がんの罹患歴がある方、疑わしい症状がある方は、大腸カメラ検査を受けることを推奨します。

下痢の検査

まずは問診によって便の色や状態、匂い、頻度、考えられる原因などをお伺いします。その後、潰瘍性大腸炎やクローン病等、炎症性腸疾患などの大腸疾患の可能性が考えられる場合は、大腸カメラ検査を行います。検査では特有の病変の有無を確認し、疑わしい部分が見つかった場合は組織を採取して病理検査を行い、確定診断を行います。
当院の大腸カメラ検査は、最新鋭の内視鏡システムを使用し、精緻な検査を行うことが可能です。また、検査の際には鎮静剤を使用することもできますので、リラックスした状態で検査を行えます。ご不明な点がある場合は、お気軽にご相談ください。

下痢の治療

下痢の治療では、脱水症状を起こさないように水分摂取量などを確認し、必要に応じて点滴を行います。疾患の一症状として下痢が起きている場合は、原因となる疾患を特定して治療を行います。その他、暴飲暴食などによる一過性の下痢の場合では、こまめに水分補給を行うことや、消化が良く腸に負担をかけないものを率先して食べるなどの生活習慣の改善が大切になります。また、足や腰の辺りを冷やさないように配慮することも大切になります。

急性下痢

急性の下痢を起こしている場合は、白湯や麦茶、湯冷まし、経口補水液などの常温または温かいものを積極的に摂るようにしましょう。また、食事では白粥や食パン、うどん、薄めの味噌汁、コンソメスープ、豆腐、ヨーグルト、すりおろしたリンゴなどがお勧めです。嘔吐を起こしていると脱水を起こす恐れがあるため、点滴が必要になります。感染性腸炎を発症している場合は周囲にうつす恐れがあるため、丁寧に手洗いをして清潔な状態を保ってください。また、食材を扱う仕事や医療、介護、保育などの仕事の関係者は、症状が治まって48時間経過するまで、仕事を休みましょう。

慢性下痢（牛乳などでお腹壊す場合）

慢性的な下痢を起こしている場合は、冷たいものや刺激の強いものの摂取は控えましょう。食事では、消化に良く栄養があるものを積極的に摂る必要があります。ごはんやうどんも柔らかく調理することで、腸への負担を軽減できます。牛乳などの特定の食品を摂ると下痢を起こしやすい場合は、それら食品は避けるようにしましょう。その他では、香辛料やカフェイン、アルコールは控えるようにし、消化が悪い油脂分の摂取も控えましょう。タンパク質は、脂肪分が少なく消化しやすい鶏ささみや白身魚、卵、豆腐、納豆などで摂りましょう。

下痢止め剤と整腸剤の役割の違い

使用する薬は下痢の種類により使い分ける必要があります。下痢止め剤には、腸管の運動を抑制する成分、腸内の細菌を殺菌する成分、荒れた粘膜を保護する収れん成分、下痢の原因物質を吸着する成分などが含まれます。下痢を起こしている原因に対応した成分の薬を選ぶようにしましょう。ただし、食中毒の治療で菌を排出する場合には、腸管運動抑制成分の入った下痢止め剤は使用できません。また、整腸剤には腸内の悪玉菌の働きを抑え、善玉菌の働きを助ける整腸生菌成分が含有されています。下痢止め剤とは異なり、腸の調子を整える目的で使用します。